イエローモンキーと呼ばれた事はありますか?
kirinはあります!
これもホームステイ中の出来事です。
語学学校では偶に(3週間に1回)遠足があります。
行き先は四つくらいあって、kirinは絶対にロンドン!幸いマーガレットをはじめ皆んなもロンドン!ということで、めでたく皆んな一緒にバスに乗り込みます。
ロンドンでは大英博物館のミイラの陳列棚の間を『臭〜い』などと叫びながら走り回ったり。
5人でお揃いのTシャツを買って、友情を誓いあったり。家族へのお土産を買ったり。パワー全開で遊びました。今、思い出しても楽しかった!
で、帰りのバスの中。
心地よい音量で流れる音楽。はしゃぎ疲れたkirinはうつらうつら。因みにロンドンからホームスティ先までは2時間弱。ちょうど良いお昼寝タイムのハズだったのですが…
後、40分くらいで到着という時になって、いきなりマイクで話始めるポルトガル人、12歳。
なんでも、ちょっと歌おうぜ!と。
でもって歌い始めたのが、ハヤシ歌みたいなものでした。
イギリス人、ぱんぱん(手拍子)。フランス人、ぱんぱん。ドイツ人、ぱんぱん。
とヨーロッパの国々が列挙されていきます。
最後に日本人と。
そのかけ声の後は手拍子ではなく、ブーイング!
kirinの睡魔は吹っ飛びました。
バスの中もザワザワし始めました。だって、バスの中の殆んどの人がポルトガル人の子が何か楽しい事をするのだろう。と思っていたと思います。なのにブーイング!然も日本人のkirinがいるバスの中で…
咄嗟にオーストリア人の男の子が止めるようにと注意をしました。彼は語学学校のアイドル的存在で、女の子達の憧れの人!
kirinはボンヤリと流石アイドルは違うなぁ。正義感もアイドルの証だなぁ〜。なんて感心していたのです。だって、これで事態は収束すると思っていたので。
だだ、残念な事に事態は悪化したのです。
止めに入ったアイドルに向かってポルトガル人の男の子が言ったのです。
大丈夫だよ。あいつは黄色い猿だから、英語は解らない。喋らないのがその証拠だよ。
皆んなも思ってるだろう?ここはヨーロッパだ!黄色い猿の居場所ではない。
あんな奴は山に帰ればいいさ!
この英語、語学レベル二歳児のkirinでもバッチリ理解出来ました。
初めに思ったのはイエローモンキーって、本当に使うんだなぁ〜と。
その3秒後に猛烈な怒りが襲ってきたのです。
ぶっとばしてやる!
彼はまだ12歳、本当にkirinより小さく、儚げだったのです。kirinが立ち上がろうとすると二本の腕がそれを押さえました。
一本は隣に座っていたマーガレットの腕。彼女は静かに首を振ります。
なんで?kirinが呟いても、ずっと首を振り続けています。
もう一本の腕は、通路を挟んで座っていたドイツ人の女の子、15歳。彼女はいつも12歳の弟と二人で行動していたので、kirinは話した事もありません。全くの初対面でした。その彼女がkirinの肩を押さえつけるのです。
なんで?彼女にも問いかけるkirin。
彼女は座っていなさい。と静かに言いました。
そして徐ろにポルトガル人のもとへ。
彼女は右手で軽々と彼の胸ぐらを掴み、静かに、でもとてもハッキリとした英語で彼に尋ねたのです。何があったの?と。
彼は小柄、それに対してドイツ人の彼女は大人と間違う程に立派な体格。
彼は諦めたのか、あいつが俺を馬鹿にした。と答えたのです。
嘘だ。kirinは咄嗟に思いました。で、首を振って抗議。
ドイツ人の彼女は更に続けます。
こんな事をして楽しいの?良心の呵責はないの?(かなり意訳)終わりにしなさい。と。
彼は顔を真っ赤にして黙っています。
彼女はkirinのところへ戻って来ました。そしてkirinにも何があったの?と尋ねたのです。
kirinは思い出していました。3日前に彼にお金を貸して欲しいと言われた事。kirinは、あなたに貸すお金はありません。と答えたのです。
その事を話すと彼女は合点がいったようでした。
更に続けて質問されました。
ねぇ、kirin、あなたはこの先もヨーロッパに来る?と。
頷くkirinに彼女も頷き返し、では今から言う事はしっかり覚えておきなさいと言ったのです。
以下、彼女の言葉です。
彼のことは許してあげなさい。ポルトガルはヨーロッパの中では小さな国。だから彼はこの語学学校の中でも、劣等感を抱いているの。そんな彼にあなたは貸すお金が無いと言った。彼が馬鹿にされたと思ったのは仕方ないこと。ここまでは解る?と。
頷くkirinに更に続けます。
悲しいことだけれど、ヨーロッパには白人は偉くて、有色人種は劣っていると考える人が沢山いるの。kirinが有色人種である以上、kirinの内面を見ずに、肌の色だけで馬鹿にしたり、耳触りなことを言う人がいるわ。この先、kirinがヨーロッパに来る度に感じると思う。
でもね、kirinはその度にその人達を殴るの?暴力は何も生まないわ。解る?と。
またも頷くkirin。彼女は続けます。
もちろん、ヨーロッパにもkirinの内面を見て、kirinと友達になりたいと思う人も沢山いるわ。だから、ヨーロッパを嫌いにならないでね。と。
英語能力が二歳児レベルのkirinにはこのように聴こえました。
感想は…なんて自分は馬鹿なんだ!
彼女はkirinと同じ15歳なのに、こんなにも聡明で大人だ。なりたい、こんな大人に!
彼女が話し終わるや否や、ポルトガル人の男の子がkirinのところへやって来ました。
そして微かな声で、ごめん。と右手を出しています。
kirinも彼の右手を掴んで、ごめん。と。
その瞬間、アイドルが一際大きな拍手をしたのです。拍手はバス中に広がりました。
語学学校にバスが到着し、降りる時。
皆んながkirinのところへやって来て、口々に好きだよ。愛してるよ。友達だよ。と言いながら力強い握手やハグをしてくれました。
その日、kirinの右手は少しだけ痛みました。でもそれはかなり嬉しい痛みでした。
この日の事はホームステイ中の出来事の中で一番鮮明に覚えています。
ドイツ人の彼女の言葉は一生忘れられません。その後も凄く役に立っています。
因みにポルトガル人の男の子は、その後も何度もkirinにお金を貸してくれ!って言ってました。kirinは毎回、断りました。もちろんお互いに笑いながら。
イエローモンキーと呼ばれた事はありますか?
kirinはあります。だけど、それはとても大切な事を教えて貰えた素敵な思い出です。
差別や偏見の無い世の中は理想的かも知れません。だけど…実際にはそんな世の中は机上の空論、絵に描いた餅だと思っています。人が三人以上集まれば様々な事が起こり得る。その時にどんな風に対応するかで、その人の人となりや考えなどは透けて見えます。
但し何を正しいと思うかという問いには、kirinは正解は無いと思っています。理想論を語っても現実的では無いので。
ただkirin自身は15歳の時に感じた事を、時々、牛のように反芻しながら、15歳の自分にダメな大人になったと思われないように…っていうのが正解だと思って生きてきました。今のところ、この先もそのスタンスで生きていくつもりです。
ちょっと思うところがあって書きました。
バイクは全然関係無いけど、頑張り過ぎる小さな友達に届くといいなぁ。彼女の荷物が少しでも軽くなる事を祈って!